超初心者向け!会社を分析してみよう⑧安全性を測る指標

会社の安全性を測る指標とは?

経済が不況になったり銀行が融資をしぶったりした際、自分自身で扱える資金が少ない会社ほどピンチに立たされます。

ということは、自身で使うことができる資金である自己資本をたくさんもっている会社は、安全性が高いということができます。

経営の安定度は資本の充実度に比例している

会社の安全性は、経営の安定度からも測ることができます。

その指標となる数値が自己資本比率になります。

上図のとおり会社は負債(借入)と資本を元手として企業活動を行います。

そのため負債の負担が大きくなると経営は安定性を欠いてしまうことになります。(下図左)

逆に自己資本が充実していると負債にかかる返済負担が少ないため経営は安定します。(上図右)

つまり、経営の安定度は資本の充実度に比例するということです。

この自己資本の割合をあらわすのが、自己資本比率になります。

会社の安全性を測る指標①:自己資本比率

繰り返しとなりますが、自己資本比率を算出することで会社の安定度を把握することができます。

一般的にはこの数値が50%以上あると非常に安定した企業であるといえます。

自己資本比率の目安は50%ですが、業種によって水準が異なります。

そのため同業他社と比較することで自分の会社が安全かどうかを見極めることが重要です。

①自己資本比率の計算方法について

会社の安全性を測る指標①:自己資本比率

自己資本比率 = 自己資本 / 総資本 × 100

目安となる数値:50%以上

  • この比率が高いほど、会社の財務体質は安定しているといえる
  • この比率が低いほど、会社の財務体質が脆弱であるといえる

それではこの自己資本比率について例を挙げてみたいと思います。

自己資本比率が極端に低い会社は借入ができなくなると操業自体ができなくなる可能性が高いです。

「財務体質の改善」という言葉が出てきた場合にはこの自己資本比率を上げることを意味しています。

「財務体質の改善」でやることは、借入金の早期返済を実施して返済圧力を抑えることと剰余金を増やして自己資本の増加を図ることが求められます。

会社の安全性を測る指標②:流動比率と当座比率、現金比率

会社経営の中で債権を回収する流れと負債を決済する流れのバランスが大切です。

このバランスが取れていること、つまり債権回収が債務の支払いをカバーできるかが短期的な支払い能力を見る指標になります。

流動比率と当座比率は以下の項目に着目した指標となります。

  • 流動資産:1年以内に現金がすることができる資産
  • 当座資産:3ヶ月以内に現金化することができる資産
  • 現金及び預金:すぐに支払いに充てることができる資産

②流動比率、当座比率、現金比率の計算方法について

会社の安全性を測る指標②:流動比率と当座比率、現金比率
流動比率

流動比率 = 流動資産 / 流動負債 × 100

目安となる数値:200%以上

  • この割合が高いほど、短期的な支払い能力が高い
  • この割合が低いほど、短期的な支払い能力が低い
当座比率

当座比率 = 当座比率 / 流動負債 × 100

目安となる数値:100%以上

  • この割合が高いほど、より短期的な支払い能力が高い
  • この割合が低いほど、より短期的な支払い能力が低い
現金比率

現金比率 = 現金及び預金 / 流動資産 × 100

目安となる数値:50%以上

  • この割合が高いほど、現金及び預金に限定した支払い能力が高い
  • この割合が低いほど、現金及び預金に限定した支払い能力が低い

それではここでこの支払い能力を測る指標を用いた例を挙げてみたいと思います。

上図のとおり流動比率と当座比率を算出することができました。

今回の例では流動比率と当座比率のどちらも目標となる数値を上回っているため、支払い能力が高いといえます。

会社の安全性を測る指標③:固定比率と固定長期適合率

短期的な返済能力を表す流動比率に対して長期的な返済能力を表すのが固定比率となります。

会社を運営する上で必要な固定資産への投資が自己資本でまかなえているかをみるものになります。

仮に固定資産を自己資本でまかなえない場合には、長期借入金で調達する必要性も出てくるかと思います。

このような設備投資などの安全性の尺度となります。

③固定比率と固定長期適合率の計算方法について

会社の安全性を測る指標③:固定比率と固定長期適合率
固定比率について

固定比率 = 固定資産 / 自己資本 × 100

目安となる数値:100%以下

  • この割合が低いほど、長期的な安定性が高くなる
  • この割合が高いほど、長期的な安定性が低くなる

固定比率は固定資産を自己資本で購入する体力があるかどうかの目安となるものです。

数値が100%を超えて200%近くある場合にはかなり要注意となります。

逆にこの数値は低ければ低いほど安全といえます。

固定長期適合率について

固定長期適合率 = 固定資産 / (自己資本 + 固定負債) × 100

目安となる数値:100%以下

  • この割合が低いほど、より現実的な長期的安定性が高いといえる
  • この割合が高いほど、より現実的な長期的安定性は低いといえる

固定長期適合率が100%を超えている会社は、資金繰りが苦しいことを意味します。

それではこの2つを使った例を挙げてみたいと思います。

上図のとおり、貸借対照表から固定比率と固定長期適合率を算出することができました。

会社の安全性を測る指標④:負債比率

借入金に依存する割合が高い会社は財務が不安定で経営体質に問題がある可能性が高いです。

負債比率は、自己資本でどれだけ負債の返済をカバーすることができるのかを表しているため、返済能力の高さを測る指標となります。

返済能力があれば、無理のない借入で経営を安定化させることができるからです。

④負債比率の計算方法について

会社の安全性を測る指標④:負債比率

負債比率 = 負債 / 自己資本 × 100

目安となる数値:150%以下

  • この比率が高いほど、財務体質が不安定である
  • この比率が低いほど、財務体質が安定している

負債比率が150%ということは自己資本の割合が40%以上で負債の割合が60%以下であれば、その会社は安全であり返済能力が高いと判断することができます。

しかし、この比率は業種によって異なります。

特に設備投資が多い業種ではこの数値が高くなる傾向にあるため一概に安定不安定と決めつけることはできません。

それでは負債比率を用いた例を挙げてみます。

上図のとおり貸借対照表から負債比率を算出することができました。

負債比率は125%なので、この会社の財務体質は安定しているとみることができます。

会社の安全性を測る指標⑤:借入金対自己資本比率

負債の多くを占める借入金と自己資本のバランスを表すのが、借入金対自己資本比率です。

この借入金対自己資本比率は、負債のうち借入金に絞って返済能力の度合いをみるのに用います。

借入金への依存が高いと経営を圧迫する大きなリスクとなる可能性が高まります。

⑤借入金対自己資本比率の計算方法について

会社の安全性を測る指標⑤:借入金対自己資本比率

借入金対自己資本比率 = 借入金 / 自己資本 × 100

目安となる数値:100%以下

  • この比率が高いほど、返済能力が低い
  • この比率が低いほど、返済能力が高い

この比率は会社の借入金返済能力の高さを示すことから、金融機関がその会社の信用力を測る目安としても用いられます。

この比率が高い会社は、借入金の依存度を極力減らして自己資本を増やす必要があるでしょう

それではこの借入金対自己資本比率を用いた例を挙げてみます。

上記のとおり、貸借対照表から借入金対自己資本比率を算出することができました。

数値が100%以下を下回っているのでこの会社の返済能力が高いということがわかりますね。

会社の安全性を測る指標⑥:正味運転資本

流動比率については既に解説済みですが、こちらは短期的な返済能力があるかどうかについての指標でした。

会社の運営が安全かどうかを知るためには、日常業務を行うのにひつような運転資金に不足がないかどうかも重要になってきます。

運転資金は通常、流動資産のことを指しますが、現実的な分析を行う際には流動負債との差額である正味運転資本を用います。

⑥正味運転資本の計算方法について

会社の安全性を測る指標⑥:正味運転資本

正味運転資本 = 流動資産 ー 流動負債

目安となる数値:プラスであること

  • この数値が多いほど、資金繰りに余裕がある
  • この数値が少ないほど、資金繰りに余裕がない

それではこの正味運転資本について例を挙げてみます。

上図のとおり貸借対照表から正味運転資本を算出することができました。

数値は60となっており、プラスです。

つまりこの数値からは資金繰りには一定の余裕があることがわかります。

会社の安全性を測る指標⑦:インスタント・カバレッジ・レシオ

会社は資金調達の方法として自己資本のほかに借入金や社債によっても資金を調達します。

この借入金や社債が多いと、利息の支払いが利益を圧迫してしまうことになります。

そのため利息の支払いを十分に賄うだけの利益を上げているかどうか、利息をどれだけ上回る利益があるかをチェックすることで支払い能力があるかどうかを示すのに用いるのが、インスタント・カバレッジ・レシオとなります。

⑦インスタント・カバレッジ・レシオの計算方法について

会社の安全性を測る指標⑦:インスタント・カバレッジ・レシオ

インスタント・カバレッジ・レシオ = (営業利益+受取利息・配当金) / 支払利息

目奴となる数値:3倍以上

  • この数値が大きいほど、利息の支払い能力が高い
  • この数値が小さいほど、利息の支払い能力が低い

この数値は高ければ高いほど良く、3倍以上あることが望ましいです。

逆に1倍以下である場合、利息の支払いができない状況でありかなり危険であるといえます。

これを改善するためには営業利益を増加させつつ、借入金の圧縮が必要になります。

それではこのインスタント・カバレッジ・レシオの例を挙げてみましょう。

上図のとおり損益計算書からインスタント・カバレッジ・レシオを算出することができました。

目安となる数値以下となっており、これを改善させるためには営業利益の増加と借入金の圧縮が必要ということがわかりました。

会社の安全性を測る指標:まとめ

今回は会社の安全性を測る指標として10個について解説してきました。

  1. 自己資本比率           :50%以上
  2. 流動比率             :200%以上
  3. 当座比率             :100%以上
  4. 現金比率             :50%以上
  5. 固定比率             :100%以下
  6. 固定長期適合率          :100%以下
  7. 負債比率             :150%以下
  8. 借入金対自己資本比率       :100%以下
  9. 正味運転資本           :プラスであること
  10. インスタント・カバレッジ・レシオ :3倍以上

今回学んだこれらの指標を使って是非会社の安全性について検証してみましょう。

次回は会社の効率性を測る指標について解説していきます。

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