超初心者向け!会社を分析してみよう⑨効率性を測る指標

会社の効率性を測る指標とは?

1年間の営業で元手を何回活用しているか、それが資本回転率の意味合いになります。

会社の経営効率を測るには一般に「回転率」という分析を行います。

企業活動の目的はこの元手(資本)を増やすことにあります。

そこで経営全体の効率を見るために使われるのが資本の回転率になります。

当記事ではこの会社の効率性を測る指標について解説していきます。

会社の効率性を測る指標①:総資本回転率

あらゆる経営資源は同じ期間に何回も活用できるほど経営効率が良いことになります。

この回転率は業種によって標準的な数値が異なるため、同業他社と自社を比較することでより明確になってきます。

会社の資本の回転率を測るのが総資本回転率ですが、似たようなものに「回転期間」というものがあります。

  • 回転率:資本が何回転しているか
  • 回転期間:資本を回収するのにかかる期間

①総資本回転率の計算方法について

会社の効率性を測る指標①:総資本回転率

総資本回転率 = 売上高 / 総資本 × 100

目安となる数値:1回以上

  • 回転率が高いほど、資本を効率的に活用できている
  • 回転率が低いほど、資本の活用度が低い

それでは総資本回転率の例を挙げてみたいと思います。

上図のとおり貸借対照表と損益計算書をもとにして総資本回転率を算出することができました。

会社の効率性を測る指標②:自己資本回転率

会社の経営効率を測る資本回転率としてもうひとつ重要なのが自己資本回転率となります。

この自己資本回転率は、自己資本をいかに有効活用して売り上げアップに繋げているかを見る指標になります。

この指標を見ていくことで自己資本を活かした経営が行われているかが分かります。

②自己資本回転率の計算方法について

会社の効率性を測る指標:②自己資本回転率

自己資本回転率 = 売上高 / 自己資本

目安となる数値:5回以上

  • 回転率が高いほど、自己資本の活用度が高い
  • 回転率が低いほど、自己資本の活用度が低い

それではこの自己資本回転率の例を見てみましょう。

上図のとおり貸借対照表と損益計算書から自己資本回転率を算出することができました。

会社の効率性を測る指標③:売上債権回転率と売上債権回転期間

売上債権回転率

会社にとって売り上げを上げるだけでは安心とはいえません。

販売した商品やサービスの代金を回収しなければ取引が完結したとはいえないからです。

特に売掛け、買い掛けが常に発生する企業間の取引では債券の回収効率が会社の明暗を分けるともいえます。

売上債権回転率の数値は、会社が1年間に何回回収しているかを示しています。

この回数が多いほど債券の回収率がよく、資金繰りの心配がないことを表しています。

売上債権回転期間

売上債権回転期間は、納品した商品の代金を平均何日後に回収しているのかを示すものになります。

この数値が目安よりも大幅に超えるようだと売上金の回収に時間がかかっていることを示すため資金繰りに困っている状況ともいえます。

会社の効率性を測る指標③:売上債権回転率と売上債権回転期間
売上債権回転率

売上債権回転率 = 売上高 / 売上債権

目安となる数値:5回以上

  • 回転率が高いほど、回収→資金への効率が良い
  • 回転率が低いほど、回収→資金への効率が悪い
売上債権回転期間

売上債権回転期間 = 売上債権 / 売上高 × 365

目安となる数値:100日

  • 期間が短いほど、債権回収の効率が良い
  • 期間が長いほど、債権回収の効率が悪い

それでは売上債権回転率と売上債権回転期間の例を見てみましょう。

上図のとおり貸借対照表と損益計算書から売上債権回転率と売上債権回転期間を求めることができます。

売上債権の回転率と回転期間が向上するということは会社の体力が増加するということです。

売上は回収してこと意味があります。

会社の効率性を測る指標④仕入債務回転率と仕入債務回転期間

前項では売上債権、つまり受取手形や売掛金の回収に着目した指標でした。

今回はそれと対極に位置づけられる支払い手形や買掛金の支払いについてです。

  • 売上債権:できるだけ早く回収して現金化したい
  • 仕入債務:なるべくなら支払いを猶予してもらいたい

売上債権はできるだけ早く回収して現金化したいものですが、仕入債務の支払いは、支払いまでの期間が長ければその分会社にキャッシュが残るため営業活動に余裕が生まれることになります。

今回はその支払いサイクルを表す指標である、仕入債務回転率について解説します。

仕入債務回転率

仕入債務には決済期限の来ていない支払い手形と未払の買掛金が含まれています。

貸借対照表の仕入手形と買掛金の合計額が仕入債務です。

この数値は会社が仕入れ債務を1年回で何回支払っているかを表しています。

つまり前項で解説した売上債権回転率とは逆で、回数が少ないほど支払い負担が軽いということです。

仕入債務回転期間

こちらは購入した商品や原材料の代金を納品後平均で何日後に支払っているかを表すもので、支払うまでの日数が長ければ長いほど良いということです。

できれば仕入債務回転期間は売掛債権回転期間よりも長いことが望ましいです。

会社の効率性を測る指標④:仕入債務回転率と仕入債務回転期間
仕入債務回転率の計算式

仕入債務回転率 = 売上原価 / 仕入債務

目安となる数値:低ければ低いほど良い

  • 回転率が低いほど、資金繰りを楽に行うことができる
  • 回転率が高いほど、資金繰りが苦しくなる
仕入債務回転期間

仕入債務回転期間 = 仕入債務 / 売上原価 × 365

目安となる数値:長ければ長いほど良い

  • 期間が長いほど、債務の支払いに余裕がある
  • 期間が短いほど、債務の支払いに余裕がない

それではこの仕入債務回転率と仕入債務回転期間について例を見てみましょう。

上図のとおり貸借対照表と損益計算書から仕入債務回転率と仕入債務回転期間を算出することができました。

会社の効率性を測る指標⑤:棚卸資産回転率と棚卸資産回転期間

棚卸資産は、流通業では仕入れた商品の在庫を意味します。

製造業では原料や仕掛品などがこれに加わります。

これらは会社を運営するにあたってどうしても必要な資産になります。

なかなか動かない在庫を大量に保有していると、資本の回転率が悪化して業績に直接響いてきます。

そのため棚卸資産の適正な保有を維持することが経営効率の鍵を握っているということです。

つまり、棚卸資産の回転率が良い会社は経営の上手い会社ということができます。

棚卸資産回転率

商品の回転が良いほど収益性は高くなります。

そのため同業種で比較した際にこの数値が良ければ良いほど他社と比べて優位性があるといえます。

棚卸資産回転率は、業種によって異なります。

  • 卸売業:20回転以上
  • 小売業:20回転以上
  • 製造業:30回転以上

優良企業の目安は上記の数値となります。

棚卸資産回転期間

保有している棚卸資産が平均何日でさばけるかを表しており、日数が短いほど在庫に無駄がないということです。

ただし、日数があまりに短すぎると在庫不足となってしまい注文に対応しきれないケースが生じる可能性があります。

平均的には30日が目安となります。

会社の効率性を測る指標⑤:棚卸資産回転率と棚卸資産回転期間
棚卸資産回転率の計算式

棚卸資産回転率 = 売上高 / 棚卸資産

目安となる数値:20回以上

  • 回転率が高いほど、運用から回収への効率が良いといえる
  • 回転率が低いほど、運用から回収への効率が悪いといえる
棚卸資産回転期間の計算式

棚卸資産回転期間 = 棚卸資産 / 売上高 × 365

目安となる数値:30日以下

  • 期間が短いほど、在庫が適正である
  • 期間が長いほど、不良在庫のリスクが高い

繰り返しになりますが、期間が短すぎると在庫不足となってしまい注文に対応しきれないケースが生じることがあります。

それでは棚卸資産回転率と棚卸資産回転期間をつかった例を挙げてみたいと思います。

上図のとおり貸借対照表と損益計算書から、棚卸資産回転率と棚卸資産回転期間を算出することができました。

回転率が25回転、回転期間が14.6日ということで、現状では運用から回収への効率は良好で在庫についても適正在庫であるといえるでしょう。

会社の効率性を測る指標⑥:固定資産回転率と固定資産回転期間

企業は多くの固定資産を保有しています。

例えば製造業では次のようなものが固定資産にあたります。

  • 工場の敷地(土地)
  • 建物
  • 機械
  • 設備 など

また、流通業ではこれにくわえて

  • 店舗施設
  • 販売システム(コンピュータなど)

こうしたものも固定資産に含まれます。

こうした固定資産は、老朽化で買い替えが必要になる場合や事業の拡大や効率化のために新しく設備等を導入するケースなど考えられます。

固定資産回転率は、設備投資をどのくらいの効率で回収できているのかを示す指標となるわけです。

固定資産回転率

固定資産の回転が良い会社ほど設備投資の効果が高く、経営資源を有効に活用することができていることになります。

固定資産回転率は、上場企業の製造業では3回前後、流通業では5〜10回がひとつの目安になります。

固定資産回転期間

固定資産回転期間は、設備投資の資金が平均何日で戻ってきているのかを示す指標となります。

一般的に製造業で100日前後、流通業で35〜70日がひとつの目安になります。

会社の効率性を測る指標⑥:固定資産回転率と固定資産回転期間
固定資産回転率の計算式

固定資産回転率 = 売上高 / 固定資産

目安となる数値:5回以上

  • 回転率が高いほど、固定資産の効率が良い
  • 回転率が低いほど、固定資産の効率が悪い
固定資産回転期間の計算式

固定資産回転期間 = 固定資産 / 売上高 × 365

目安となる数値:60日以下

  • 期間が短いほど、設備投資の効率性が高い
  • 期間が長いほど、設備投資の効率性が低い

それでは固定資産回転率と固定資産回転期間を使った例を挙げてみたいと思います。

上図のとおり貸借対照表と損益計算書から、固定資産回転率と固定資産回転期間を算出することができました。

固定資産回転率は5回転で目安となる数値と同様なので固定資産の効率は良いといえますが、固定資産回転期間は73日と目安となる数値よりも長い期間が算出されました。

ということは設備投資にかかる効率性に関しては効率があまり良くないので改善を検討する必要があるということですね。

会社の効率性を測る指標:まとめ

今回は会社の効率性を測る指標として10個について解説してきました。

  1. 総資本回転率     :1回以上
  2. 自己資本回転率    :5回以上
  3. 売上債権回転率    :5回以上
  4. 売上債権回転期間   :100日
  5. 仕入債務回転率    :低いほど良い
  6. 仕入債務回転期間   :長いほど良い
  7. 棚卸資産回転率    :20回以上
  8. 棚卸資産回転期間   :30日以下
  9. 固定資産回転率    :5回以上
  10. 固定資産回転期間   :60日以下

今回解説した指標を使って、是非会社の効率性について検証してみましょう。

次回は会社の生産性を測る指標について解説します。

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